Evergreen
第57代理事長 岩崎 敏久
第57代理事長 岩崎 敏久

~はじめに~

 明るい豊かな社会とは何か。
 1949年、青年有志たちにより東京青年商工会議所(現・東京JC)が設立されました。戦後4年という混沌とした時代を背景に、東京青年商工会議所は、日本再興を目的としてその礎を築き上げ、設立以来『明るい豊かな社会の実現』を理念にJC運動を展開しました。その運動は全国各地へと波及し、各地に青年会議所が誕生しました。地域の課題に目を背けずにその解決を使命とし、明るい豊かな社会の実現の為、各青年会議所は現在もなお運動を続けています。
 それから70年以上の月日が経ち、我々を取り巻く社会は急激に変化しました。大きな要因としてインターネットがあり、情報を得るスピードと量は飛躍的に増し、今となっては、オンラインデバイスは我々の生活にとって必要不可欠なものとなりました。いつでも、どこでも、多くの情報を容易に手に入れられ、人と人とのつながりはオンライン上で容易に可能となり、あらゆる利便性がインターネットによって叶えられた現在も我々は常に課題を抱えています。少子高齢化(超高齢化社会)、地球温暖化といった環境問題、経済成長の行き詰まり、幾多にも及ぶ課題に対し、我々は逃げることなく向き合っていかねばなりません。
 2020年、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威を振るい、我々の生活は否応なく変化に迫られました。自分自身や家族、身の回りの人々の健康を守る為には、当たり前に過ごしていた「今まで」の生活に新たな変化を取り入れ、「これから」の生活に躊躇なく切り替えていかなくてはなりません。リモートワークやローコストな新たなビジネススタイルによって利便性は向上しました。しかし、不要不急な外出の自粛やイベントの中止など消極的な行動が増えるほど、地域と経済活動の活性化は停滞を余儀なくされます。積極的な経済活動、地域活性化の為には、人々が活発に活動する事が出来る環境が欠かせませんが、リスクと安全という矛盾を抱えながらも我々は未来へと舵を切っていかなくてはならないのです。青年会議所で運動を続ける以上、立ち止まることなく、リスクを最小限に抑えながら地域活性の為に今できる事を考え、実行に移すべきです。

~会員拡大~

 会員の減少は全国的に大きな課題となっており、上越JCにとっても深刻さは年々増す一方です。本年度の卒業生は19名で、全会員数の4分の1以上を占めています。今後、会員拡大が疎かになっていけば、ほんの数年で現在の会員数の半分以下に落ち込み組織の存続は危機的な状況となり得ます。地域を活性化させようとする我々組織の衰退は、地域課題を解決する活力の喪失と直結します。19万人を有する上越市において、我々が青年会議所として永続的に運動を行うには仲間・同志が必要です。そして何より、青年会議所でしか得られない人とのつながりや自己成長の機会を多くの地域の青年に得て頂きたい。一時的な増加ではなく、継続的に会員を拡大する為に必要なのは、会員一人ひとりの意識の変革と組織のブランド力の向上です。会員拡大は他人事ではありません。メンバー全員が危機感と当事者意識を持ち、新たな仲間を求めて会員拡大運動を行いましょう。

~スタートライン~

 JCに入会した動機は人それぞれです。そして年齢も違えば職種も様々です。そんなメンバーが一年目はオリエンテーション委員会に所属し、同じスタートラインに立ちます。在籍しているメンバー全員が一度経験したスタートラインです。同期として入会したメンバーは不安や期待を抱えながらこのスタートラインに立ち、「JCとは何か」「JCでは何をするのか」を学んでいくのです。共に一年を過ごしたメンバーの結束は二年目以降のJC活動、プライベートの充実につながります。JCに入会した事で、多種多様な機会が全員平等に与えられます。学びの機会、成長の機会、出会いの機会、それらを臆する事無く、経験して頂きたいです。この「経験」が必ず地域、社業、家庭に活かせる「結果」となります。この一年の集大成を上越JCの中だけに示すのではなく、一年目という枠に捉われずに、地域に向けた事業を実施して頂きたい。一から事業を構築する過程で、JCの存在意義を本質的に理解し、次年度以降、上越JCを担う人財、地域で活躍をする人財を育成します。

~SDGsの推進で持続可能な地域へ~

 SDGsとは、持続可能なより良い世界を目指し国連サミットによって採択された全世界共通の国際目標です。17のゴールと169のターゲットから構成されるSDGsは、地球上の「誰一人として取り残さない(Leave no one behind)」ことを誓っています。2019年より全国の青年会議所でSDGsを推進していく事が日本JCの総会で採択をされ、我々、上越青年会議所もSDGs推進団体の一つとなりました。新型コロナウィルスが世界的に問題視されている今は、このSDGsを達成させる為の挑戦であり、大きなチャンスであると言われています。現在では多くの企業がSDGsに取り組んでいますが、十分に認知されているとは言い難い現状です。まずは多くの方に、知って頂く、そして、世界規模の課題と怯まずに、当事者意識を持って頂くことから始めます。難しく考えずに、身の回りの小さなこともSDGsにつながっているのだという意識を地域へと伝えることがSDGs推進団体としての我々の使命です。本年は、SDGsを軸に事業を展開し、LOM一丸となったフォーラムを開催します。

~自然から得られる大切なもの~

 我々の住む上越市は海と山に囲まれ、四季折々の豊かな自然に恵まれた地域です。この豊かな自然は時に厳しく、時に優しく、私たちに様々な事を伝えてくれています。私の生まれた1980年代に比べ、現代の子供たちは、インターネットの利便性を享受し、スマートフォンやタブレット端末で娯楽やエンターテインメントをオンライン上で楽しんでいます。未来を担う子供たちもまた、AIとの共存、IoTの活用といったデジタル化が進んだこの時代をこれから生きていくのです。デジタル化を否定したいわけではありません。現在の生活環境、利便性の向上を考えれば、デジタル化の需要拡大は必至ですし、更なる進化に期待は高まります。しかし、部屋の中で画面を見ているだけでなく、我々の地域にある豊かな自然の中で水、土、動植物に触れ合う事は、感受性、健康、知識の向上につながるものと考えます。子供たちと共に地域の自然の大切さ、豊かさを学び、我々の暮らす豊かな自然環境を持続的に次世代へと伝えていきます。

~アート×デザインでJCの新しい見せ方を~

 五感の中で、最も情報収集能力が高いとされているのが「視覚」であり、我々は常日頃、視覚で物事を判断する機会が幾多に及びます。昨今、デザインの多様化により、個性の表現や差別化、ブランディングが出来る時代となりました。我々はそのモノのデザインによって判断が左右され、デザイン性に優れたものを選択します。歴史上、古くから芸術家は存在し、我々の生活の一部としてアートは存在をしてきました。創造者のイメージ、メッセージを具現化したアートは、人々に癒しや興奮、共感といった様々な感情を与えます。事業にデザインとアートという二つの視覚的要素を取り入れる事で、より多くの方へ参加意欲を高め、事業の目的を伝える事が出来るはずです。我々の行う事業は、参加される方が居ることで成り立ちます。伝えたい方に届かなければ目的も達成する事が出来ません。青年会議所の新たな見せ方を通じて認知と浸透性を高め、JCのブランド力を高めます。

~組織運営と情報共有~

組織には、プレーヤーだけではなく、マネージメントをする人、支える人が必ず必要です。青年会議所という組織の性質上、庶務的な役割を担う委員会が欠かせません。各種事業の案内、取り纏め、諸会議の設営など、会員数の減少によって個々の負担が増しつつありますが、SNSやインターネットを有効活用し、負担を軽減し、円滑な組織運営を行います。毎月行われる例会は、全会員が集まる貴重な場です。諸規則に則ったセレモニーを遂行することは勿論のこと、LOM内での意識統一、情報共有、会員同士の交流の充実を図ります。特に情報共有の面では、各委員会が対内への情報共有、想いを伝える機会は実はそれほど多くありません。委員会の掲げるヴィジョン、活動状況といった情報を共有する事が出来れば、組織として意識統一ができ、参画意識が高まると考えます。例会という月に一度の機会を組織が結束する場として、有意義に活用していきます。

~結びに~

 今まで人類は多くの試練を乗り越えてきました。感染症の蔓延や地震、水害などの天災は我々の生活を大きく変えてしまいます。数分前まで当たり前だった事が、ある出来事をきっかけに全て一変してしまうのです。しかし、人々は日常を取り戻すために、知恵を出し合い、協力と助け合いを重ね、再興に向け今も動いています。昨年、社会が大きく変化しました。社会と共に自分自身も変化をしなくてはなりません。「今まで」ではなく、「これから」を見据える時代、変化に順応していくだけではなく、自ら変化を起こす時です。

 明るい豊かな社会とは何か。
 捉え方は人それぞれです。私は、日々変化し続ける今の社会の課題と向き合い、常に人と地域の為に、より良い社会を創っていく事、青年会議所という団体が無くなるその日まで未来の景色を描き続ける事であると考えます。そこに携わり、運動を続けていく事が我々の使命です。70年前に描いた明るい豊かな社会は、もうすでに実現されているのかも知れない。しかし、我々は、今もなお明るい豊かな社会の実現に向けて運動をし続けているのです。

 『Evergreen』 ~JC Must Go On~
 常緑樹は暑い夏も寒い冬も、その葉を広げ、鮮やかな色を保ちます。成長の為、次に生えてくる葉の為、生き抜く為に常に葉を繁らせます。我々もその力強い生命力のように、地域に根を張り、信頼と共感の幹を育て、いつまでも枯れる事のない葉をつけましょう。刻一刻と時代が変化しても、いつまでも瑞々しく、我々にしか出来ない発想と行動力で果敢に挑戦し続けましょう。我々の運動は必ず地域に鮮やかな景色を映し出します。

公益社団法人上越青年会議所 事務局025-522-1819受付時間 10:00-15:00 [ 土・日・祝日除く ]

メールでのお問い合わせ お気軽にお問い合わせください。