理事長所信

 

~ はじめに ~

 公益社団法人上越青年会議所は52年目の年を迎えました。

 51年間もの長い間、より良い地域を目指し先輩諸兄は青年らしい柔軟な発想と果敢な行動力のバトンをつながれてきました。そして我々はその想いを受け継ぎ次世代へとつなげながら市民の暮らし向上や観光誘客、産業の発展や自然環境の維持及び活用、健全教育と防災危機管理など様々な事柄において調和のとれた上越市らしい地域発展の為に尽力する責務、そして携わることができる権利があります。

理事長 大嶋 賢一

 しかし近年は好転しない経済状況や社会情勢の複雑化などにより“青年らしい発想と行動力”を容易に発揮しづらい環境になっているのではないでしょうか。ただ青年会議所を卒業することとなる40歳を超えた頃から年齢を重ねるごとに会社や家庭、地域などでの責任がそれまでの比重より増すこととなるでしょう。またより若ければ社会経験の不足が否めません。やはり青年会議所に所属出来る我々世代が地域を舞台に目的を持って闊達に躍動することは個人的にも地域としても大変尊いことであり我々はどのような状況下にあろうとも青年としての発想と行動力、併せて組織力も用いて地域の課題に対してチャレンジをしなくてはなりません。

 そのチャレンジの場となる上越市は2014年高田開府400年、2015年北陸新幹線延伸開業と市内外を問わず大きな話題性を生む事柄が続いてきました。大きな節目を終え、交通インフラが整ったこれからが上越市ならではの独自性を活かしたまちの在り方を見出し永続的な発展の仕組みを構築する、まさしく「地方創生」が重要な時代となります。 

 上越市を改めて俯瞰的に見ると広域のメリットである様々な環境が整っており、それぞれの土地に適した産業やそれぞれの土地が有する観光資源などのより一層の活用が「暮らす」及び「訪れる」人を増加させる将来的な要素となり得ることに気付きます。また東京圏高齢化危機回避戦略の対象地域に上越市が選ばれ、NPO法人ふるさと回帰支援センターの2014年田舎暮らし希望地域ランキングでも新潟県が5位に選ばれるなど期待が高いことも事実です。これら上越市ならではの「要素」と上越市への外部からの「期待」を具体化しそれを機能的に運用する事が上越市の「地方創生」の新たな第一歩と考えます。そして我々青年会議所だから持ち得る発想と行動力が今、最も活かされる機会となることでしょう。

 

~ 中核地域に求められること ~

 平成の大合併以来「旧上越市」と呼ばれている高田と直江津。両地域は1971年、我々上越JCの先輩諸兄の尽力により一つの市と生まれ変わりました。しかし両地域は歴史的背景からお互いを強く意識し合い、交わる機会を避けて来たかのように感じます。合併より45年を経た今でも残念ながら旧態依然のまま平行線を歩んでいます。

 その45年間に経済状況を見ると景気は激しく変動し、今ではデフレが進み大型量販店が郊外に進出を続け、社会的には人口減少に相まって一都市集中、地方の空洞化が進んでいます。大きな期待を持って合併したであろう旧上越市は典型的な地方公共団体の現状を映し出す事となってしまっております。

 我々上越JCのメンバーは生まれた時にはもう既に高田市でもなく直江津市でもなく上越市となっていました。そこに居住する者はそれが当たり前で、他地域に居住する者は憧れをもって同市に訪れていました。歴史を曲げることはできませんが、その歴史や個々の地域の特性や気質を尊重しつつ、高田と直江津の新たな関係性を築くことで今の時代だからこそ必要とされる上越市のリーディング地区を作り上げることができるのではないのでしょうか。まずはリーディング地区としてオリジナリティーのある2地域のつながりの足掛かりを見出すことが市全体の大きな発展の第一歩と考えます。

 

~ 独自性と協調 ~

 「旧上越市と13区」と称される現在の上越市ですが、13区は平成の大合併までそれぞれが町村でありそれぞれのコミュニティを形成していました。合併の年はその地域の独自性を見直し活かす、いわゆる地域アイデンティティの再興が改めて必要視された年でした。11年経った今、その地域アイデンティティは見直されたことによってどの様に変化を遂げたのでしょうか。産業面や観光面、また暮らしといった観点でも地域の強みが見て取れる独自性を明確に示すことがもっと必要だったかと思いますが、市政としては大きな変革があった中で市民生活においては良くも悪くも合併前の各々のコミュニティに大きな変化があったとは考え得られません。その影響のみではないかと思いますが、上越市の人口減少は進み、日本一人口の多い過疎地として全国に名を示すこととなりました。

 合併後10年の節目を昨年迎えたこの地において、合併そのものに意見をする時期はすでに終えており、今一度、各区がそれぞれの地域アイデンティティを再興し且つ11年目を迎える上越市の1つの区としての担いを新たな観点からも見出す必要性があると考えます。それらの役割が独自性を持ちつつ他区を補い合い尊重することが出来れば、必然性や必要性からより感覚的な地域間の距離が縮まり広域合併の強みが増すこととなります。

 

~ 強みの共有から得られること ~

 様々な物事において万が一不足しているものや新たに導入したいものがあったとするならば、それらに対する対応方法の判断は大変重要です。それらを独自で対応すると考えるならば費用負担が発生し時間も費やすかもしれません。逆にそれらを既に持っている他者の力を借りると考えるならば費用負担は無く時間もかかりません。時と場合によりますが短期的な対応としてリスクの少ない後者を選ぶのが妥当と考えます。

 上越市の観光も同じことが言えるのではないでしょうか。上越市の観光の代名詞と言えば春の観桜会や夏の海水浴など十分な観光資源を有していると考えられますが、年間通して全国に誇れる普遍的な観光資源はありません。しかし自然遺産といにしえのロマンを感じる物語を活用する糸魚川市や冬をメインに様々なレジャーを楽しめる妙高市、歴史と文化が色濃く残る佐渡市など地域の特徴を有効に活用した観光誘客を図っている自治体が近隣にも存在します。

 昨年延伸開業した北陸新幹線、新造船あかねの就航により高速交通インフラが整った今、お互いの強みを共有し不足部分を補完し合える近隣を含む他地域との関係性を築くことが国内外からより一層の誘客を図ることとなり、将来的にはそれぞれが抱えている課題に対応するための学びを得て自立した地域への発展につながります。

 

~ 活動の発信から生まれる相乗効果 ~

 私は入会し本年で6年目を迎えます。5年間のJC活動は根深い地域の課題やそれを解消し「明るい豊かな社会」への道筋を作るための方法論などそれまでに知り得なかった物事を習得することができ、各年の担いや役職は大きな経験となり人生の中でかけがえのない期間となりました。しかし前述したことは結果であり入会した当時はその様な学びがあることは想像していなかったと記憶しています。たまたまお声掛けをいただいた事で得たこの貴重な経験をもっと多くの青年に知っていただき同志として共に活動したいと今は率直に思います。その多くの青年に知っていただく機会としてより一層の広報活動が必要と考えます。

 そもそも近年の課題の多様性からJC運動も細分化された専門性の高い分野の取り組みを行うことが求められ対応してきた半面、その取り組みについて市民に理解いただき共に活動する第一歩としての「興味」を示していただくまでの労力が委員会活動の中で大きなウエイトを占めていると感じます。その第一歩を今までと異なる広報活動にて補うと共に、活動が運動となって地域に根付く過程を示すことが出来れば、我々上越JCの地域での役割が明確になり、運動に対し共感を持った青年が共に活動する機会を求め同志となる働き掛けとなります。

 

~ 将来を見据えて ~

 上越青年会議所に伝統的に設置されているオリエンテーション委員会。自分も入会し同委員会で過ごした1年を鮮明に覚えております。入った当時は数名しか知人はいなかったものの共に活動し、懇親を深めることによって為人を知り旧知の仲のように今でも公私ともに頼りにできる仲間ができた1年でした。そのような仲間作りの場でもあるオリエンテーション委員会ですが、JCについて根本的な知識や考え方をしっかり身に着けることも重要です。近年のJC活動はスタッフ主導と言われメンバーがその事業の本質を掴めないまま活動に参加している姿を目にします。これはJCの運動としてはあるまじき事かと思います。やはり大きな命題の解決に向けて運動している意義をしっかり理解した上で、活動に臨まなくてはその運動は広く伝播することも無いかと考えます。そういった観点から例年オリエンテーション委員会が行っている事業を本年も継続し、その事業の本質や運動の意義をしっかり把握した上で活動していただきます。

 併せて各委員会が命題を元に上越各地にて活発に活動する中でオリエンテーション委員会にも青年らしく地域活動に率先して参画していただきます。与えられる経験と自ら導く実践の両輪を持ち得るメンバーが育つことが長く受け継がれてきている上越JCの発展、ひいてはメンバー個々の成長、「明るい豊かな社会」の実現につながります。

 

~ 今求められる会員交流 ~

 近年メンバーの率先したJC活動への参画意欲の不足について耳にします。各種事業に対して設営する仲間に敬意を払い学ぶべきものを見出して出席するのがこの組織に所属しているメンバーの責任であり権利です。しかし仕事や家族、個々の取り巻く環境から参画を果たせないメンバーが増えている現状があります。ただ望んで所属しているJCであることからすれば別の要因も存在すると考えます。その要因としてJC活動に対して参画しないといけない「責任」が重く圧し掛かっているように感じ、参画できる「権利」がメリットとして感じ取られていないためと考えます。「責任」からJAYCEEならではの「プライド」として、また「権利」をJAYCEEだから行使できる「権益」として捉える大きな転換が必要です。

 その意識改革はまず会員一同が会する例会の場からと考えます。礼節を弁え、学びや修練がある環境をつくり、お互いを尊重するアナログ的な交流を例会にて創出することが今の時代だからこそ重要です。もちろんデジタルを活用したスピード感と正確性のある情報伝達も行いつつ、凛とした空気感の中で崇高な意識を共有するメンバーが集うことで「プライド」を、我々の世代だから必要としJCだから可能となる学びや修練を得られることで「権益」を保ち、併せて感覚や感情を揺さぶる様な設営をする事が参画意識向上に必ずつながります。そして例会からアナログ的な会員同士の交流が規模の大小問わず派生すれば参画意識から当事者意識へと変化が進み伴って組織力が相乗的に増大し、その大きな力は地域の躍進的な変革となって還元出来る事でしょう。

 

~ 結び ~

 今の時代、インターネットを開けば欲しい情報がすぐ見つかる大変便利な時代です。

 しかし文字面だけでは読み取れない、画像だけでは見て取れない、動画だけでは感じ取れないものがあります。

 表情や感情、温度や空気感・・・。

 それらは実際に話し、実際に見て、実際に体感する事で現状を知り得、課題の本質を的確に捉える事が出来、必要とするそして求められる打開への方向性を見出すことにつながります。

 

 そのための第一歩。

 上越市民と話し、上越市を見て回り、上越市らしさを体感しましょう。

 

 我々上越青年会議所が打開への方向性を柔軟な発想で具体的に表し、その実現へ市民と共に果敢な行動力で邁進すれば必ずや上越市の持ち得る「要素」が花開き、上越市に対する「期待」が現実となるオリジナリティーのある調和のとれた上越市の創生が成されると確信します。

 

 

[2016年度 活動指針]

  1. 上越市のオリジナリティーある地域発展を目指し、市内各所にて青年らしい柔軟な発想のもと果敢な行動力で活動を行います。
  2. より地域から求められる組織への昇華を見据え、また組織力増強を目的とした会員拡大に努めます。
  3. 2015年度策定した「CREDO」を銘肝として各事業の構築を行います。
  4. 地域に根付く運動への展開に不可欠な事業計画の精度を高めるため、2016年度議案上程ルールを順守し、円滑な会議運営に努めます。
  5. LOM外にて行われる様々な事業に対し意義をしっかりと見出した上で、率先して参画いたします。
  6. 公益社団法人への移行から5年目を迎える本年、より公益性を高め、併せてJC運動に注力する整備のため定款及び諸規則の見直しを行います。